また貫井徳郎さんの小説を勧めていただいて、「慟哭」を読んでみました。
事前に情報はまったく入れずに読んだのですが、
ラストの”どんでん返し”の部分が
序盤の頃から予測していた通りになって、うわーやっぱり…!!という感じでした。
途中で「やっぱり違うか?」とか「どういう時系列?」と考えながら読むことができて
早く真相が知りたくて一気に読んでしまいました!(プリズムを読んだ時も一気読みしてしまった。)
貫井徳郎さんの小説は面白いですね。
章(?)ごとに、警察側と犯人であろう側の視点が入れ替わって物語が進んでいくところも
読者を飽きさせないというか
どんどん読みたくなる要素になっていてとても良かったです。
「慟哭」は一読と言わず、再読したくなる小説だなと思いました。
「慟哭」ざっくりストーリー
連続して幼女誘拐事件がおきており少女の遺体が発見された。
捜査の指揮をまかされた捜査一課長の「佐伯」は難航する捜査によって窮地に立たされていく。
一方、心に大きな穴を抱えた謎の男の視点でも物語が描かれ、この二人の視点が入れ替わりながら進んでいく。
・・・・・
※ここからネタバレを含む感想
「慟哭」の結末 ※ネタバレあり
これが物語の最大の”どんでん返し”になりますが、
捜査一課長である佐伯と、
心に大きな穴を抱え宗教にのめりこみ少女誘拐殺人を犯す松本という男は
同一人物でした。
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佐伯が捜査にのりだした頃、すでに2件の少女誘拐事件が起きていました。
まもなくして3件目の誘拐事件がおき、
その次に起きた4件目の誘拐事件被害者が佐伯の娘、”恵理子ちゃん”でした。
恵理子ちゃんが誘拐犯に狙われたのは、記者会見で佐伯が犯人を煽る発言をした(意図的に)ことが原因だと思われます。
誘拐された恵理子ちゃんは遺体として発見されます。
佐伯は「自分のせいで娘が犠牲になってしまった」と悔やみ、心が壊れてしまいました。
佐伯は丘本に「娘のこととなると気違いになる」と発言していたことからも、
自分の子供に対する思いが強かったのでしょう。(自身の家庭環境がよくなかったことが影響してると思われる)
病んでしまった佐伯は警察を辞め無職となり、妻とも離婚をして旧姓の「松本」になりました。
悔やんでも悔やみきれず心に穴が空いてしまった佐伯は、救いを求めるように
新興宗教にのめりこんでいきます。
その新興宗教で行われていた儀式はいわゆる「黒魔術」で、
なんでも願いが叶うというものでした。
佐伯は「黒魔術」で娘を生き返らせることができると思い込み、
儀式に使う”娘の依代(よりしろ)”を求めて、少女を誘拐するようになります。
佐伯は、3人の少女を誘拐して儀式で亡き者にし、
4人目に”現捜査一課長の娘”を誘拐しようとしたところを丘本に発見され逮捕されました。
つまり
はじめに犠牲になった3人の少女と、佐伯の娘を殺害した犯人は別にいて、
そのあとに佐伯が3人の少女を誘拐して殺害しています。
最後に、
佐伯は「恵理子(佐伯の娘)を殺した犯人は判明したのか?」丘本に聞きますが、
丘本は「いえ…まだです」と答えます。
7名の少女が犠牲になり、先の4人の少女を殺した犯人はみつかっていないんですね。
奇しくも恵理子ちゃん以前の3人の誘拐事件と、恵理子ちゃん以後の3人の誘拐事件の状況が酷似しており、まるで同じ時系列で起きている事件のように錯覚してしまいました。
感想:佐伯が記者会見に出たシーンで「ん?」となる
事件があってから第1回目の記者会見に佐伯は出ることになり、
”佐伯の顔が映るモニターを捜査本部の皆が見守る”という描写がありました。
そして、すぐ前のページでは
新興宗教の勧誘をしてきた銀縁眼鏡の男が佐伯の横顔をみて
「どっかであなたとお会いしたことがありましたっけ?お顔に見覚えが…」と発言しています。
この二つの描写から、
「記者会見で佐伯はテレビに映った ⇨ 顔を覚えられている松本は佐伯なのでは?」と思いました。
2つの描写がかなり近くに書かれていたので「あえて匂わせてきてる!」という感じがありました。
このあと川上という女性の「顔に見覚えがある」ような発言もあり、松本は色々な人に顔を覚えられていることがわかります。
苗字が違うという点も、佐伯は警視庁長官の娘と結婚しているという描写から
婿入りで苗字が佐伯になったのでは?と推察できました。
(実際、”佐伯警視”と義父のことを呼んでいたことで確定)
なので離婚したことで佐伯から松本になったんだろうな〜と。
佐伯が松本かもと思った点は他にもあって、
ふたりとも知的で冷静、多くを語らない話し方が同じだったからです。
同一人物を書いているのだから話し方を大きくは変えられないですよね。
なので色々な可能性を疑いながらも、自然と頭の中で佐伯と松本の人物像が一致してしまっていました。逆に全然別人だったらびっくりだったと思います。
感想:時系列がよくわからなくなり、混乱!
序盤に”平成三年一月八日火曜日午前十一時”と書かれているのを見て
「わざわざ日時が書かれているということは、佐伯視点と謎の男の視点で時系列がずれてるのでは?!」と思いました。(なんとなくすぎる。笑)
銀縁眼鏡や川上が「松本の顔に見覚えがある」といっている=記者会見を見たあと
だと仮定すると、松本の視点は佐伯視点よりもけっこう後なのかなと思いました。
しかし松本は「これから宗教にはまって犯罪を犯しますよ〜」って感じが
プンプンだったので、事件の前の話?って感じもする。
読み進めていくと
松本が黒魔術のために1人目の少女を誘拐するところが、
佐伯の捜査している事件で誘拐された少女の一人目が誘拐されたのと同じタイミング(同じ事件)のような感じもして、
佐伯視点より松本視点は前の時系列なのかも?と思えてきました。
じゃあ松本は佐伯なのかと思ったけど、もしかして別人?とか
だとしたら誰が犯人?もしかして石上が犯人だったり!?とか
色々な可能性を考えて本当に面白かったです。
これが著者の狙いか…!匂わせた上で分からなくする。
本当にすごいです。
まさか7人の少女が誘拐されていると思わなかったので、時系列がわからなくなり本当に混乱しました。
感想:山名教授という犯罪心理学者
山名教授という犯罪心理学者が登場するシーンがあるのですが
これは『プリズム』に出てくる山名さんのお父さんとかですかね!
プリズム読んだばかりなので、山名という名前にテンションがあがりました。
慟哭のほうが先に書かれているので、プリズムの方で山名教授の娘を登場させたっていう感じでしょうか。
もしかしたらお父さんが犯罪心理学者っていう描写があったかもしれない。だから山名さんも犯罪に詳しいみたいな設定だったような…。(違うかもだけど)
さいごに
「慟哭」、ほんとうにおもしろかったです。
序盤からところどころに真相を匂わせるのような描写があって予測は立てられるのですが
”佐伯が捜査している誘拐事件”と”松本がおこしている誘拐事件”が
同じ事件だと思わされてしまうので
時系列がわからず、推理を掻き乱されて面白かったです。
松本=佐伯というのが真相には「やっぱりか〜!」となりましたが
7人の少女が犠牲になっていて、もう一人の犯人は捕まっていないというラストは予想していなくて
ぞっとしました。
再読したらまた発見があって面白そうですね。
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